商標「御用邸」VS「御用邸の月」

 株式会社いづみやは、栃木県那須郡那須町において菓子の製造・販売を業とする会社です。

 平成235月ないし7月ころから、平成23527日に設定登録(商標登録第5415157)された「御用邸の月」の文字からなる商標を菓子について使用を開始したところ、当該「御用邸の月」の文字からなる商標は、登録商標「御用邸」の商標権を侵害するなどとの訴えが株式会社庫やから提起されました。

 これに対して株式会社いづみやは、登録商標「御用邸」について無効審判を請求しました。

 その結果、訴えられた株式会社いづみやの登録商標「御用邸の月」は維持され、訴えた株式会社庫やの登録商標「御用邸」が無効とされました。

 

 特許庁のIPDLで「御用邸」を調べると、本件とは別に、1つの登録商標と2つの商標登録出願があります。そうすると、その登録商標は無効理由を有しており、商標登録出願は拒絶されるものと思われます。詳細は下記のとおりです。

 

1. 商標「御用邸の月」に関する審決取消訴訟について

 特許庁は、両商標は非類似であり、公序良俗を害するおそれがいないとして、維持審決を下しました。裁判所もこの審決を支持しました。

 維持理由は、以下のとおりです。

 「外観は「の月」の有無により明確に区別でき、称呼は、両者の構成音及び構成音数が明らかに相違し、一連に称呼した場合、両者は十分に聴別し得るものであり、観念においても相違するから、本件商標と引用商標は、外観、称呼、観念のいずれにおいても相違し、混同のおそれのない比類jの商標であると認めることができる。」

 

2. 商標「御用邸」に関する商標無効審判について

 裁判所は、本件商標の登録は、法第4条第1項第7号に違反してされたものであるとして、この登録商標を無効にしました。裁判所もこの審決を支持しました。

 無効理由は、以下のとおりです。

 「皇室と何らの関係を有しない者と認められる本件商標権者が、「御用邸」と同一の文字よりなる本件商標を、専ら自己の業務(利益)のために利用する意図をもってその指定商品について独占使用することは、皇室の尊厳を損ねるばかりか、国民一般の不快感や反発を招くものであり、穏当ではない。」

 

以上